ツェルマットな日々 その5日目



ブライトホルン(BRITEHORN 4164m)登山の一日


【8月24日(水)】


スイスに来て5日目にしてようやく山らしい山に登ることができるので、やっと本番って気分♪ この日はS夫妻(よっちゃん、ひーちゃん)&N夫妻(西さん、節ちゃん)&私でツェルマットのガイド組合で手配したガイドと登るグループ登山である。ゴンドラ乗り場に7時50分に集合の予定が、自分は出遅れて5分ほど遅刻であたふた・・・・。皆が集まっているところに一人遅れてスイマセンでした。


全員揃ったのでゴンドラに乗る。よっちゃんは自己紹介も兼ねてガイドさんと話をする。今日のガイドはベネディクトさん。18年間ガイドをやっていて、マッターホルンには200回は登っているという。今年は既に9回登っているとのこと!(こんなに今年は天気が悪いのに・・・・。どうやら6月あたりに多く登ったのでこれだけ多くの回数が登れたようだ) よっちゃんは、この界隈の山には相当登っているので、あちこちの山の名前に触れて話をしていた。ガイドレスでも2回ブライトホルンには登っていることも話していた。


ゴンドラの中からは快晴の景色でまぶしいばかり。このゴンドラには初めて乗ったが、あたりには気持ちの良さそうなハイキングコースも見えていて、どこもかしこも絵になる風景だ。ゴンドラを降りて左の方に行くと、次はロープウエイでトロッケナー・シュテーク(2939m)に登るのだが、ここが超混雑で、スキーや大きなポールを持ったスキーチームが大挙して身動きするのも大変なほどの人数だった。(後でわかったのだが、実はロープウエイが故障のために一時ストップしていたのだそうだ)。すんなりと乗ればすぐなのだが、行列がすご過ぎて人混みの中に一生懸命ガイドの姿を追う形だった。スイスのスキーのナショナルチームが合宿をやっているというし、他の外国のチーム等もいそうだ。帰りには日本人のジュニアレベルの人達にも会ったので、かなりレベルの高いスキー場のようだ。もちろん、一般のスキーヤーやボーダーも結構いる。かなり待っている時間があったので、さすがに寒かった。実は今日は軽量化を意識しすぎて、普通の雨具(冬用でない)に、薄手のフリースで、ピッケルも省略。(ガイド登山のためもあって、実際はストックで十分足りたが、ちょっと軽率だった) さすがにひーちゃんにたしなめられて反省。やっぱり何度もヨーロッパに来ているので、色んな面で教えられることが多くて感謝。アルプスは天気の良い時は雪からの反射熱で暑いぐらいの時もあるが、標高が高いので一旦太陽が翳ったら急激に寒くなるから要注意だ。行列待ちしていた所は室内だが、なんかひんやり・・・・。 自分は、ガイド登山というと、モンブランの時のガイドのハーリーアップ一辺倒のトラウマを思い出してしまい、結構朝から緊張していたが、おしゃべりしているうちに大分緊張もほぐれてきた。そうこうしていると、ガイド組はスキー客とは別に右の優先の所を行けるので、少し優先されて、やっとロープウエイへ。そして、更にもうひとつ乗り継いでやっとクラインマッターホルンへ。


クラインマッターホルンの駅は既に3883m。富士山よりも高い!! 
ここで、最後のトイレ(有料で1CHF)をすませてから、ハーネスをつけたりの準備に入る。トイレの隣に事務所みたいな所があって、下山後に食べるつもりの我々の昼食をデポしていくことにする。英語でデボジットと書いた札をつけたバックで預かっていてもらうこととした。(S夫妻はさすがに慣れているなあ・・・・)


ハーネスをつけて準備を済ませると、自分がセカンドで、次は節ちゃん、西さん、ひーちゃん、よっちゃんの順番にガイドがオーダーを組んだ。いよいよ全員をアンザイレンすると出発だ。長〜〜いトンネルの中を、ガイドはかなりのスピードで歩き始めた。まだここは山の中ではないんだけど・・・・・。長いトンネルを抜けると、そこからはまぶしいぐらいの雪原だった。すぐにサングラスを装着。9時15分頃スタート。最初はごく緩やかな下りで、スキー場の中を歩いていく。しばらくすると、左のトレースに進むが、ガイドのベネディクトは思いっきりかなりの速足なので、くっついて行くのが大変。後ろの節ちゃんの方からはもっとゆっくりとザイルは引っ張られるし・・・・・。前にも遅れないようにくっついていきたいし、困ったなあ・・・・・・。ガイドは最初のうちは我々の力量をテストをするような感じだった。私はテストに失格しないようにと心がける。それに順調に行けば明日はマッターホルンのテスト山行のポリュックスなので、それもここと同じ道を最初は進むわけなので、明日のことも考えても弱音をはかないように一生懸命歩いた。いきなり3900m近い所を歩いている割には、呼吸を意識して歩けたので割と順調だった。


先行するパーティーが既に幾つか登っており、綺麗に今日はトレースが出来ている。一番早いロープウエイで上がった人達がもう山のかなり上の方にいるみたい。やがて、前を歩く先行パーティーとの距離が近づいてきたし、少し後ろが遅れ気味なのをわかってくれたので、スピードをやっと少し落としてくれてほっとした。トレースが左にやや曲がる感じになり、歩き出して30分ほどの9:45頃からやや傾斜が出てきた。その後、皆がアイゼンをはいている箇所に、大体10:05分頃到着。急いでアイゼンを付けると、まだ他の人が終わっていないので、これは幸いとばかりに写真を撮って楽しむ。本当に今日は良い天気だ。今までの待機の鬱憤もやっと少し晴らせた気分だ。


ここから先は、他のパーティーの後ろをずっと追随していく形なので、ペースもゆっくりとなり、ある程度は急登なのだが体はラクに感じた。時折ピッケルの持ち替えならぬストックを左右で持ち換える。大きく4回程度ぐらいジグザクを切ったと思ったら、前がつかえている。あれ?と思って一段上がった階段状の所を上がると、そこがブライトホルンの山頂(4164m)の一角だった。大体10:45だった。


山頂といっても細い稜線みたいな感じで、稜線に上がった瞬間に冷たい風に一瞬にしてさらされる身となった。体がきゅんとなる冷たさだった。今までの汗をかいていた暖かさはどこぞに消えてしまった。稜線は先行の人達が3,4組いて混雑状態。一番高いらしい場所はあと10mか20m位先なので、しばらく写真などを撮ってからそこに移動する。移動するといっても、結構細いので、左側なども下手すれば滑り落ちてしまいそうな傾斜だ。大雪の関係で、雪が固められている箇所は畳で2、3畳ぐらいか?とにかく、とてもよい展望で、一杯山々が見えて大満足。近くのポリュックス、カストール、リスカム、モンテローザは無論のこと、マッターホルン、ヴァイスホルン、ドム、ティシュホルン、遠くはこの日はモンブランや、メンヒ、ユングフラウ方面まで見えていたようだった。写真を一通り撮ったので、風がかなり寒いので一段下がった所で休憩しましょうとなった。


一段下がった場所は日向ぼっこという感じで、のんびりとする。ここ数日間全く登れなかった状態が続いていたせいもあるだろうけど、次から次へと絶え間なく人が登ってくるのは圧巻! 私達を含めての待機組がどっと繰り出したということだろう。それにしても、大快晴で、あたりの山が皆輝いて見える。マッターホルンがここだとやや角度を変えて見えるのが面白い。今後登る予定のポリュックスやカストール方面にもトレースが延びているのが誠に嬉しいところである。(これで、私はポリュックスに出撃できそうで嬉しいなぁ♪)




いきなり富士山より高い所に到着して長いトンネル歩き  クラインマッターホルン駅から出てスキー場の中を歩いて左に向かう
ブライトホルン全容  こんな感じの雪原のトレースを歩いて左の方向へ 
やっとトレースがこの日は山頂まで出来ました  ガイド、私、節ちゃん 
見えている所を上がると頂上だった マッターホルンをバックに
左から西さん、よっちゃん、ひーちゃん、節ちゃん、私 ガイドのベネディクトさんと一緒に山頂の稜線で
左がモンブラン、右がグラン・コンパン 遠くにベルナー・オーバーラントの山々も見えていた
右からアルプフーベル、テッシュホルン、ドム 一段下がった場所からマッターホルンを眺めながら休憩
帰りの途中で あと少しでクラインマッターホルンだが、見た目よりも遠い





山頂で10分ぐらい、日向ぼっこの所で20分程度ゆっくり休んでから、さて下山だ。
下山は登りと逆に、よっちゃんが先頭で、ひーちゃん、西さん、節ちゃん、、私、ガイドの順だ。一部登りのトレースを使わないようにして下ったので、多量の雪の斜面を降りるので、もぐるもぐる・・・・。膝どころか、腰ぐらいまでもぐる感じの時もあり、今回の豪雪を改めに実感する。なんと、ひーちゃんは途中で胸まで雪に入り込んでしまった時さえもあった。本当に雪の量が凄かった。これでは、前日にラッセル敗退したという話も理解できた。今日は皆で登れば恐くないというのか、やはり夏の雪も降って3日目となると、さすがに少し嵩は減ってきているのだろう。色んな人達が登っているので、結構下りのせいもあり、行列を見ているのも面白い。登っている人達の中には日本人らしき人や日本人ガイドも見かけた。


急な所を下りきると、再びトレースに戻ってそれからアイゼンを外す。再びガイドが先頭になって歩き始める。このあたりは雪原(プラトー)と呼ばれているが、なんか平坦なんだけどクラインマッターホルンの駅が見えている割には遠く感じる所だ。さらに、微妙に最後は登りでなんだかだるい。西さんが早くザイルを解いて勝手に歩きたさそうにしている(笑) アンザイレンして歩くのが気にならないようになるのも訓練のうち・・・と思っているので我慢我慢。天気が良すぎて結構暑い。最後のゲレンデ内みたいな所で、やっとガイドはザイルを解いて皆を解放。ガイドは私に自分のストックをしばらく持って欲しいと言うので持って歩いていると、彼は歩きながらロープを流しながら巧みにロープを束にしていく。彼らは当たり前のようにやっているけど、こういうのって日本では見たこと無いなあ。雪だとロープは流れるからできるのかと内心えらく感心した。12時15分ごろ駅に到着。


クラインマッターホルンの駅で解散。無事にまずは1つ目の4000m峰に登れて嬉しかった。\(^〇^)/
ここでまずは、一旦トイレもしたかったので長いトンネルを戻って昼食のデポを回収。それから、ピクニック気分で再び景色のよい駅の出口に戻る。本当は、さらに見晴らしがよい展望台に登ろうとしたものの、豪雪のため除雪がされていないので登れず。近くの雪の上で、ピクニック気分で今登ったばかりの山をおかずにのんびり昼食。なかなか、満足な気分である♪ かなりまったりと寛いでから、ロープウエイで1つ分下がることにした。


ちょうどこの時だったろうか? 同じロープウエイで日本人ガイドの方と日本人二名が乗っていた。早速、よっちゃんがガイドさんにお声をおかけしたところ、白野民樹さんというシャモニー在住の国際ガイド資格を持つ日本人ガイドの方だった。よっちゃんは、ヨーロッパ関係の山の本をよく読んでいたので、ヨーロッパの多くの山を登っていることで知られている脇坂順一さんをガイドした方が白野ガイドさんだったのを覚えていて、二人で会話を少し交わして記念撮影までしていただいていた。実はこの時の出逢いが後に自分の身に関係してくるとは全く思ってもいなかったのだけど、偶然というのはすごいものである。


S夫妻の案内で、ひとつ下がった位置のトロッケナー・シュテークの展望台が素敵だからということでテラスの方に行ってみた。ここは本当に素晴らしい展望台で、今登ってきたばかりのブライトホルンが真正面にそびえていて、素晴らしい。高度も下がったので、やや落ち着ける感じがした。モンテローザも美しく見えるし、ドム方面のミシャルベルの山々。素敵な開放感のある所だった。たくさんのテーブルや椅子が置いてあるので、適当にその陣取ってしばらくぼーっとしていた。テラスの逆の側に行くとマッターホルンが見えるのだが、残念なことに、この時はかなり雲がかかっていて、全体の様子が見えない。実際はかなりの至近距離にあるので、雲さえなければ大迫力なのだが・・・・。晴れるのを待っていたが、半分ぐらいはベールに隠れていて、本日はヘルンリ小屋界隈にはまだ一杯雪があるということだけはわかったのでした。(がっくり・・・・)


なんか、ぼーっと寛いで幸せな気分。皆で写真を撮り合ってから下山。シャワーを浴びて、昼寝など楽しんで、夕方に明日の予定の連絡打ち合わせがアクティブマウンテンから携帯で入る。明日は予定通り当初から予約を入れていたガイドのヘルムートさんと一緒にポリュックスに登ることに決定!ようやく、ポリュックス方面にもトレースが出来たのでGOサインが出た。明日は天気もよさそうなので、嬉しい。(予定ならば、ヘルムートさんを3日間キープしていたので、マッターホルンにも一緒に登ることになっていた) ヘルムートは、アクティブマウンテンの一押しのガイドなのでとっても楽しみ♪ 今日のガイドのベネディクトは結構ペースが速い感じだったので、明日はもう少し全体のペース配分がよい人だといいなあ・・・・・。



クラインマッターホルン駅
出発9:15頃
アイゼンつける10:05〜
10分程度
ブライトホルン山頂と休憩
10:45〜11:15頃
クラインマッターホルン駅
戻り12:15頃



クラインマッターホルンからみたブライトホルン 左がリスカム(西峰、東峰)と中央がポリュックス、右がカストール
クラインマッターホルンの駅(一番上の展望台は閉鎖だった)
上にスキーのTバーがぶら下がっている
ロープウエイの中からみた氷河の迫力
トロッケナー・シュテーク展望台 ブライトホルンをバックに。右の尖っているのがクラインマッターホルン
マッターホルンの一部、ヘルンリ小屋はほぼ中央の垂直が始まる手前 MINMIN


                                                  ※このページの写真はS夫妻提供のものを含みます