【トレーニング】

 
 アコンカグアに登るのに、まずどの程度のことを準備しておかなくてはならないか? それは、登り方によって大きく異なると思う。一般に、アコンカグアは特別な登山技術がなくても登れる山としては一番標高が高い山と言われている。特別な登山技術とは、いわゆる雪山技術等のことを指すと思うが、簡単なアイゼンでの上り下りぐらいはマスターしておくべきだと思う。岩登りの技術は必要ない。


 そうなってくると、最大のポイントは荷揚げをどこまですることかによってだいぶ体力消費量が違うことになる。私はプロローグに書いたようにネパールに行こうと思っていたので、ネパールはポーターやヤクと呼ばれる動物がずっと荷物を背負う環境なので、あまりボッカ力は鍛えていなかった。アコンカグアで最も一般的と思われる登り方はベースキャンプまでは動物に運んでもらい、そこから上は最低でも自分の個人装備位は担ぐというやり方だ。このところテント泊をしていなかったので、秋には2度ほど15キロ程度は担ぐトレーニングをしておいた。最初の登山口から全ての荷物を全ボッカして登る人もいる。でも、これだと相当にしんどそうだ。テントもベース用とアタック用と二つも担ぐことになってしまい相当しんどそうだ。あるいは、外国のキャンプでは、常設のテントが用意されているので、それだとアタックテントだけを担いでいくという形も結構多そうだ。


 幸いなことにAG社では上部キャンプまで一人5キロの荷物までポーターで雇って登る方針なので、参加者はごく軽い身の回りの品だけを持って登ればよいという。普通の山ならば10キロ位ならば問題ないが、なんせ高所のしんどさは自分なりには十分理解しているので、空気の薄い状態でのボッカには自信が全くなかった。だからAGのツアーの話を聞いて、これなら登れるかもと思った。


 そうなるとあとは長時間歩行をこなせるかということと、いかに高山病にならないかということだ。もともと、この年に備えて、「ハセツネ24時間耐久レース」にも一昨年に参加して、とにかくなんとしてでもゴールする精神鍛錬?を行った。またそれに参加するためにフルマラソンを完走できる程度のトレーニングを行った。仕事が忙しくなってしまったので走行距離はますます少なってしまったが、それでもいつでも10キロ程度は走れるような体力を維持することに努めた。


 本当は高所訓練で富士山や高い山に一杯登ることがトレーニングに役立つが、とにかくツアー代金を支払うために節約節約・・・・ (大苦笑) 先立つものがないと山でのトレーニングもできないのだ。富士山は車を持っていない私にとっては、夏山シーズン以降はバスも日帰りできる時間にないので気軽なトレーニングの場にならない。結局、トレーニングは近くの山や近所のランニングという超ローコスト。最後に予定していた二重靴とアイゼン調整を見るための足慣らしの雪山もお正月寒波のために南アルプスから大菩薩嶺に変更。 


 結局、大した山にトレーニングには行かなかったけれども、富士山に今まで7回登ったけど大きく高山病になることは1度もなかったし、ネパールでもあまり深刻な高山病にはならず。あとは自分を信じるしかないと考えた。


  あまりに少ない山行記録なので、恥ずかしいけど、2010年度の山行記録はこちら。この山行のために、この1、2年は山に行くよりも地道に貯金と体力増強に努めていたというのが本当のところ。(^^;) 限られた給料からやりくりするには、そういう方法しかないのです。普段の山も一杯行って、スキーも一杯行って、人並みの付き合いや、おしゃれも・・・・なんて贅沢なことでは実現不可能だったでしょう。また2月にはゲレンデスキーで左肩を転倒をきっかけに肩関節周囲炎になってしまい、ますます山に行かなくなっていた。潤沢に資金がある人は別ですが、何かを得るためには削れる部分は削らないとならないのが自分の現状。そうかといって、若者の貧乏旅行のようなリスクは負えないし。社会人なので確実に休暇明けには出社しなければならないので、ツアー会社で行くのも保険をかけているということでしょうね。


 あとは、脳内トレーニングとしては、実際にアコンカグアに登ったことのある友人に直接のアドバイスをいただくことや、ネットでの体験記や高所登山全般の知識を蓄えておくことだった。約20年前にアコンカグアに登った学生時代の同じ山岳同好会の友人の糸屯一君や、2003年に登られている青空山岳会さん(その詳細な記録はバイブルのように何度も拝読させていただきました。)のアドバイスは肝に銘じた。

 二人とも体力勝負と高度順応のことがポイントだとのこと。本格的なランナーだと心肺機能が良すぎて一気に登りすぎてかえって高山病になったり、その微妙なバランスが難しいみたいだ。とにかく、自分の高所適性?を信じて臨んだのでした。